「しゅうかつ」といえば、かつては就活、つまり就職活動のことをいいました。
ところが、おなじ「しゅうかつ」でも最近では自分の人生の終わりを有意義に過ごすための、「終活」が注目をあびています。
かつては、自分が死んだあとのことを考えるなんて縁起でもないと考える人が一般的でした。
ところが最近では、終活関連の書籍やセミナーなどが大変人気になっています。
なぜ、これほどまでに終活に注目が集まっているのでしょうか?
家族との関係が希薄化していたり未婚率の上昇が原因の1つ
日本人が大家族で暮らしていたころは、自分が死んだあとのことは、家族が何とかしてくれるという考え方が一般的でした。
自分の死んだあとのことはなるべく考えたくないし、万が一のときのためにエンディングノートを書いておこうなどと思う人は誰もいませんでした。
最近になってこれほど終活がブームになっている背景には、日本人が家族と暮らすというライフスタイルが成り立たなくなっていることが1つの原因としてあります。
家族がいても、子どもが独立すると家には老夫婦だけが残されるというのが一般的になってきました。
家族の絆はどんどん希薄になっていき、親の面倒はみたくないと考える子どもが増えると同時に、自分の子どもには一切世話になりたくないし財産も残したくないと考える親も増えています。
それと同時に、日本人の未婚化率もどんどん上がってきています。
つまり、日本という国から家族という形態がどんどん消えつつあるのです。
2035年には、日本の2世帯に1世帯は1人暮らしになるであろうという予測もあります。
そういった、自分が死んだあとのことを誰にも託すことができない人たちがどんどん増えてきたことが、終活ブームが起きている一つの背景になっています。
家族に迷惑をかけたくないという理由で終活をする人も
家族の関係が希薄になってしまう人がいる一方で、自分が死んだあとに残された家族に迷惑をかけたくないという理由で、終活に取り組む人も増えているようです。
生前に葬儀のことやお墓のことを準備しておいて、家族に心労や経済的な負担をかけさせまいと考えている人たちです。
子どもたちに、自分の墓の管理で手間をかけさせたくないという理由であえてお墓をつくらずに、海洋散骨や樹木葬といった方法を希望する人も増えてきました。
また、先祖代々のお墓も、将来的には誰も管理をする人がいなくなるのを見越して、墓じまいを選択するケースも多いようです。
墓じまいをして、寺院や霊園などに永代供養をお願いしてしまえば、残された人たちに負担をかけることはないからです。
相続のことを考えて終活をする人もいます
自分の子どもたちが相続争いでバラバラになってしまうことを心配するあまり、エンディングノートだけではなく、正式な遺言書を残すという人も増えています。
こういったことも、日本が大家族だったころには、あまり考える人はいませんでした。
家というのは、長男が跡を継ぐという考え方が一般的であり、そのことで兄弟が争うということもありませんでした。
「家」という概念がなくなってしまったからこそ、親は自分が死んだあとのことを真剣に考えざるを得なくなってしまっているわけです。
将来に対する漠然とした不安を解消するための終活
終活がブームになっている背景には、これまで紹介した以外にも、将来に対する漠然とした不安が原因になっていたりします。
自分がどんどん年を取って行くにつれて、健康や衣食住に関するさまざまな不安が大きくなってきます。
特に、家族との関係が希薄になってしまった人や、身寄りのない「おひとりさま」の場合は、その不安は想像以上に深刻です。
高齢の一人暮らしの人だと、賃貸住宅に入居するのが困難になってきますので、持ち家のない人はどこに住んだらいいのかという切実な問題が生じてきます。
また、年齢とともに病気になる可能性も高くなっていきますが、家族との関係が冷え切ってしまった人やおひとりさまの場合、入院する時の保証人の問題が大きな壁となって立ちはだかります。
入院や介護施設に入ったりするといったときに、ほとんどの医療機関や施設では身元保証人や連帯保証人を必要とします。
しかし、家族との関係が悪くなってしまった人や身寄りのないおひとりさまが、身元保証人を探すというのは非常に困難です。
そういった将来の不安に備えるために、元気なうちから積極的に終活に取り組まざるを得ないという人も、最近では多くなっているのです。
終活がブームになっている背景には、このように現代人ならではのさまざまな深刻な理由があるわけです。
この終活ブームは一過性のものではなく、今後もしばらくは続いていくに違いありません。
参考サイト:終活の達人